中国・大連に現地法人を設立。中国語のみならず日英・英日翻訳にも対応

(株)トランスワード

広島に本社を持つ(株)トランスワードが、中国の大連に現地事務所を開設したのは2005年のこと。
2006年には現地法人化し、質の高い中国語関連翻訳サービスを提供している。

◆お話 (株)トランスワード代表取締役社長
仲谷幸嗣さん
(株)トランスワード代表取締役社長 
仲谷幸嗣さん

コストダウンの必要性を見据え海外進出を決意

 (株)トランスワードの仲谷さんが海外進出を検討し始めたのは、6年ほど前に遡る。海外進出を考えるようになったきっかけはコストダウンのため。
「過去10年を振り返ると、翻訳料金は良くて横ばい、悪ければ何割かカットというのが現状です。反対に人件費は増えている。5年、10年先を考えると、国内だけでの翻訳ビジネスは成り立たなくなるのではないかと思いました。拠点を海外 に移し、トータルにコストダウンしないと生き残れないと考えたんです。
それに、海外でも仕事はあるんですよ。たとえば弊社と関係の深い自動車業界は、中国やロシアに工場を移転するなどグローバルな展開をしています。技術のノウハウを世界中の支社で共有するために、マニュアルや社内文書を日本語から英語に翻訳する会社は多いんです」
 仲谷さんが最初に進出したのはオーストラリア。日本人の翻訳者が大勢住んでいること、当時はオーストラリアドルが安く、コストダウンが見込めたことがその理由だった。が、円安のためオーストラリアドルが値上がりし、コストダウンどころではなくなってしまう。仲谷さんはオーストラリアからの撤退を決定した。

日本語人口が多い大連に現地事務所を開設

 その後、仲谷さんは中国に目を向ける。それはちょうど、中国で翻訳会社が次々と設立され、日系企業に盛んに売り込みをかけてくるようになった時期と重なる。
「こうした中国の会社は、翻訳料金は安いけれど、納期や品質に問題があり、今のところ我々の仕事がなくなるまでには至っていません。ただ彼らも必死なので、そのうち品質も納期も改善されてくるでしょう。そうなった時、料金が高い日本の翻訳会社に仕事を発注する人はいなくなるのではないか、という危機感を持ったんです」
 まずは北京、上海などの大都市を視察したものの、人件費が予想より高いこともありどうもしっくりこない。そんな時訪れたのが、友人が語学留学していた大連だった。
「行ってみたら大連はすごく親日的な町で、日系企業も多数進出している。日本語を専攻している大学生の数も多い。日本語ができる人材が豊富なんです。かつ人件費もそれほど高くない。広島からも近いですしね。飛行機で2時間弱ですから、東京と同じ感覚で来られるんです。それでまずは現地でビジネスをやっている人に話を聞き、『これはいける』と思って事務所開設を決意しました」
 事務所を立ち上げるにあたっては、毎月1回大連に赴き、中国人大学生を集めて、就職説明会ならぬすきやきパーティーを開いた。その中から優秀な学生を採用し、2005年6月に事務所を開設する。
「そのちょうど1年後に現地法人にしました。とはいえすぐに顧客を開拓できたわけではありません。現地にも日系企業はありますが、翻訳は日本の本社で管理しているので、仕事が発生しないんです。だから最初の1年間はひたすら広島で請け負った仕事を大連に流していました」

受注・翻訳・納品を一括して請け負える現地法人を目指す

 地道な努力が実り、最近では現地法人での仕事も増えてきている。
「中国のポータルサイトに登録している企業から、翻訳の発注が来たりもしています。ただし今のところはまだ、広島の本社が日本の企業から中国語関係の翻訳を受注して、それを大連でスタッフにやってもらうというのが主流ですね」
 驚くことに、中国人スタッフが行っているのは中国語関連の翻訳だけではない。日英/英日翻訳もこなすのだという。
「大連でやっている翻訳業務の半分以上は、英日/日英翻訳です。そのため中国人スタッフは日本語も英語もできる優秀な人材を採用している。大連には21以上も大学があるし、日系企業に就職したいという人も多いので採用には困らないんです。簡単なものから始めて、1年経つと日本の新人翻訳者並みにはできるようになります」
 IT業界では、早くから中国やインドで従業員を採用している。仲谷さんは、いずれは翻訳業界でもそうした試みが始まるのではないかと言う。
「海外事務所を開設している翻訳会社はいくつかありますが、日系企業から受注した仕事を現地の会社に丸投げするというコーディネーションだけ行っているところが多い。私は現地で翻訳者を育て、受注から翻訳・納品までできる翻訳会社を作りたいんです。優秀な人を鍛えて成長させるということが、私にとって一番の喜びですから」
 広島で培った翻訳者講座のノウハウを活かし、今後は難しいと言われる中日/日中の技術翻訳も中国人スタッフに教えていきたいと抱負を語る仲谷さん。(株)トランスワードの中国現地法人は、これからもまだまだ成長していきそうである。
●トランスワードとは?
技術翻訳を得意とする広島の翻訳会社
 英日技術翻訳会社として1997年に設立。国内外のメーカーに質の高い技術翻訳を提供してきた。現在では「翻訳ドキュメントの提供」、「翻訳者養成」、「e-ビジネス」の3つのサービスを行っている。得意分野は自動車、電気・電子、機械、コンピュータ関連。
 中国・大連の現地法人「特朗思翻訳(大連)有限公司」は2006年6月に設立。本社で経験を積んだ翻訳者が常時駐在し、本社の品質基準を守りながら、低コストで中国語翻訳を実現している。
トランスワード
◆問い合わせ先 
(株)トランスワード
〒732-0823 広島市南区猿猴橋町1-8 スミヒロビル5F
TEL: 082-506-3233 / FAX: 082-506-3234
社内写真
(株)トランスワードの中国法人、特朗思翻訳(大連)有限公司の社内。日本企業が多く入居している森ビルの中にある。
景観
大連事務所から見た大連の風景。